2012年5月5日土曜日

ソーシャルゲーム ガチャと景表法

<景表法違反?>
5月5日付 読売新聞朝刊が、消費者庁がソーシャルゲームのコンプリート・ガチャ(以下「コンプガチャ」)を景表法違反と判断したと報道している。もっとも5日お昼現在でもネット版の記事はなく、他社の追随報道も見当たらず(※)、連休中に新たな事実や判断が発生するものか、という疑問点も指摘されているが、いずれにせよ大きな反響を呼んでいることは間違いなく、2月に書いた当ブログのソーシャルゲーム・シリーズも改めてアクセスが増加している。
当ブログが、最近ソーシャルゲーム・シリーズはアップデートしていない、しかもこれらのエントリは今日問題になっている景表法への言及が少ない、という二点において検索経由で来ていただいた訪問者を落胆させていることは間違いなく、まったくもって日本人である筆者は訪問者の舌打ちが聞こえる気がして恐縮至極である。

この状況を打開するため、かつ一方でゴールデンウィーク中で網羅的に調べモノをする余裕がない、さらに過去エントリの内容を忘れつつある、という制約の範疇で、簡単に概況を要約しておきたい。

そもそもコンプガチャ問題の法的論点は、以下の通り。

1) 景品表示法(「景表法」)
2) 賭博罪(刑法185条)
3) 風俗営業法

当ブログのエントリを含め世の中で景表法よりも賭博罪での議論が盛り上がったのは、消費者庁自らが「ガチャは景表法の問題ではありません」と宣言した(と伝えられている)からである。
2月16日に消費者庁で開かれた「インターネット消費者取引連絡会」の会合で、参加者が「ガチャに景品表示法違反の可能性がある」などと指摘している。だが、消費者庁表示対策課は「ガチャは取引に付随する景品ではないので景表法の景品規制には該当しない」と特に問題視はしていない。(2012年2月25日付 日経電子版「行き過ぎたソーシャルゲーム」)
ゲームの中で行われるゲームの構成要素としてのガチャは景品ではない、と言われれば「まぁ、それはそうですなぁ」となるので、この時点で消費者庁の理屈は通っていたと言える。
というわけで、その後は賭博罪、それに付随して風俗営業法の適用が議論されてきたのである。

<回帰?>
ではなぜ、今。改めて景表法に話が戻ってきたのか。
筆者の推測では、このまま賭博罪と風俗営業法のロジックで詰めていくと被害が大きすぎる、と規制する側とされる側が合意したのだろう。賭博罪と風俗営業法は、国内のある一地方での不穏な動きを押さえるのに核兵器を使うようなもの。先人の知恵を借りれば「牛刀をもって鶏を割く」だ。なので、ひとまず当事者全員にとって受け入れられる現実的なところを目指しましょう、と。

となると、細かいことが気になる筆者としては「コンプガチャは景品ではなかっただろうに」と突っ込みたくもなるのだが、この点は、「いや、よく考えてみたらコンプガチャによってゲームの売上げが上がるんだから、顧客の誘引でしたな」という考え方もある、、、んだろう。

さらにもう一つ。
景品の定義は「経済上の利益」(景表法第2条3項)。
だから、コンプガチャを景表法上の景品と見なすということは、コンプガチャ(で得られるカード)が経済的価値を持つと公式に認めることになる。となると、仮に景表法上の「絵合わせ」問題をクリアしても、賭博罪と風俗営業法等の問題は引き続き残り得る、ということだ。逆に言えば、そちらを避けるには景表法でしっかりと対応してこの議論を収束させる必要がある。

one more thing.(しつこい?)
ソーシャルゲームでユーザが支払う、あるいはユーザ間でやりとりする対象はあくまでデジタルデータである。景表法であれ、賭博罪&風俗営業法であれ、モノではなくデジタルデータについて適用するには深い谷が横たわっている。それでもその谷を跳ばねばならぬなら景表法の「絵合わせ」の方が何かと何だ、という関係者の判断なのだろう。

冒頭で書いたように、景表法違反の取り扱いは未だ確認されておらず、実際には異なる結論になるかもしれない。しかし、もし今朝の報道の通りだとしても、それはそれで現実的な当面の(あくまで当面の)落としどころとしては悪くないのではないか、などと考える子供の日なのでありました。

いつも通り、お気づきの点がありましたら優しくご教示願います。


※5月5日の夕方に毎日新聞ウェブ版(毎日.jp)記事掲載。
携帯電話ゲーム:コンプガチャ 景品表示法抵触の可能性
※5月5日21時頃、日経電子版にも記事掲載
コンプガチャ、アイテム商法は違法 消費者庁

※5月7日 定義方法が分かりづらいため、ガチャとコンプガチャの表記を本文中で区別

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